地獄のようなレポート期間が終わり、ストレス発散に購入した本を眺めるだけの日々に嫌気がさす中、久々に日焼けの機会が訪れた。以前何度か出身高校からの依頼で受験生の後輩へのメッセージとか勉強法とかのご高説を垂れさせていただいていたのだが、その謝礼を用意していると連絡があったのだ。
ほうほう。時給931円で働く身としては、臨時収入があるのは嬉しいこと。以前は図書券1000円分で母校のチラシに肖像権を売り渡していたので、今回もそんな感じかな?と思ったのだが、出向いて現金か郵送で商品券を選べとのお達し。3項目の「担任のT先生に寄付する」は無視するとして、このクソ暑い中出向けるかよとも思ったけど、現金の誘惑には勝てず。
学校の最寄り駅を降りて、酷暑の中をとぼとぼ歩く。あはは、苦しいじゃありませんか。長い冬の戦争の記憶が色濃く残るためあまり覚えてはないのだが、この通りは死ぬほど暑い。あと、日光が目に刺さって、大声で泣いてしまいそう。ドンキで安いサングラスでも買おうかな?
絶賛試験休み中の高校周辺に人影は少ない。高校に臨む公園を通り抜けていると知った顔が一つ、二つ。まさか隣接する公園が喫煙教師のメッカ(アジール?)になっていたとは、卒業するまで気が付かなかった。俺に漢文教えてくれなかったそこのダディーそっくりの古典教師、お前、一生恨むからな。
狭い校庭には運動部の影。テニスは密接にならないからあまり割を食っていないのかもしれない。受付の事務員に要件を告げると、来客用のロビィに通される。そこは生徒立ち入り禁止のエリアで、つくづく私はこの高校の生徒ではもうないのだということを思い知らされる。
担任が登場、黒マスク。あたしゃアンタを見損なったよ。と思ったが、
彼は日本史教員。史学科志望の受験生であった私とは相性が良く、センターの時も赤門の前で熱い激励を受けたもんである。開口一番に飛び出してきたのがこの数か月の愚痴。お疲れさんです。彼は受験指導もしている割に大学の現状には疎いらしく、数少ない授業以外はすべて収録配信の授業であるといったらおったまげていた。「学費泥棒だなそんなの」入試で「猪苗代」が書けなかった私に「バカじゃねえの?」と言い放った彼は違う。自分の関係ないことに関しては日和見を貫かない彼の姿勢を私は見習いたいと思う。
話は級友の進学先に移る。誰それはどこそこに行っただの、あいつは浪人してるだの。そんな話生徒にしていいんですかね?今年は徹底した不作だったようで、「あいつがあそこ受かってくれりゃなあ…」を3回ほど聞いた。
私はある文科系のクラブに所属していた。名実含め2年間部長をやっていたので思い入れがあるのだが、新入生が1人も入らず廃部寸前らしい。ヤバいっすね。今年は文化祭もないので宣伝もできない。今度顧問にも話を聞いてみよう。
再訪の意思を伝え校門を抜けると、すげーいい天変地異。原初の世界とよく似た色をした空は、現下の状況など素知らぬ涼やかな顔をしている。早く元通りになんねえかなぁ。