嘘です。
昔から流行には疎い人間だった。例えば、流行りの音楽はほとんどわからない。いわゆる「邦ロック」や洋楽、ラップ音楽、韓流アイドルといった「Z世代」の人たちが耳にする音楽はほとんど知らない。1年を通してSound Horizonばかり聴いているからである。小沢健二、BUCK-TICK辺りはたまに聴くが、あくまで曲単位での好みの問題であるし、そもそも両者のメイン層は恐らく40代以上である。
どんな本が流行しているかも知らない。中公とちくまの新書や専攻の新刊ばかり追いかけているからである。そのせいで最近の本屋大賞や芥川賞、直木賞受賞作品なんて知らないし、ましてや同級生がインスタにアップしているこじゃれた「エモい」表紙のハードカバーなんて読んだことがない。こんなんで出版社に就職したいなどと抜かしているんだから滑稽
服装なんてのもそうである。秋口から春にかけては、セーターとスキニーパンツとコートの着回ししかしないし、髪型も生まれつきの毛の流れを整える程度。携帯はXperia、OSはAndroid。そして顔はオタクである。最悪だ。
話が逸れた。そんなあたくしが、ついに、ついに流行に乗れる俊寛(なお、昨年の大河ドラマ出演なし)がやってきたのである。
新型コロナ罹患という最悪の形で。
いや勉強になったよ、意外ときついっスねこの病気。おせち料理に飽きはじめたころ、ラーメンを食べに行った帰りからどうにも鼻水が出る。確かに慢性鼻炎ではあるけど、鼻は出ず詰まるタイプだし、まだ花粉が飛ぶには早いな、なんてネムネムの顔で家につく。ダラダラと課題をやっていると、どうにもやる気が出ない。やる気なんていつもないのだが、今日のは少し格が違う。仕方がないので、筋トレでもするかと思い、30分ほど席を外す。気分転換を終え、席に戻るもなんだか体が重い。普段はこの程度運動しただけで疲労することは無いのに。いよいよ体の変調を感じ取ったとたん悪寒が襲ってきた。寒気はもうれつ。震えながら口に解熱剤を放り込み、お布団にダイブする。風邪の引き初めにそんなことしても熱が下がるはずもなく、熱は39℃に到達。ビエンチャン🥺。ほかほかのガタイを横たえ、雄叫びを上げるオレ。
「おうーっす!うっす!」
「……」
「うおーっ!あうーっ!」
「……」
自主隔離生活は辛いぜ!
そうして36時間も狂っていると、イエノモノが咳をし始める。おいマジかよ!我が家が種(ウイルス)壺と化した可能性が高い。熱は降下傾向にあるが、こうなると外来に行った方がいい。なぜなら熱で狂っている間、課題も何も終わっておらず、公欠を勝ち取らないと成績に響くからだ。濃厚接触云々で詐欺に近い休みを取ったことがあるから、これはその罰かもしれない。運命ってチョーSだよな!
発熱外来で鼻から綿棒をぶち込まれ、のどまで粘膜を蹂躙される。いや、既にウイルスに蹂躙されているので、セカンドレイプかもしれない。
「レイプの後遺症だろ?」
「いや、違う。」
「はい、って言え。」
「●はい。」
案の定陽性が確定するオレ。意気揚々と帰宅し、学部事務室にドヤ顔で罹患証明を送付すると、そのまま20時間近い眠りにつくこととなる。
目を覚ますと、大きな咳が出た。アンアンイヤン、これでは部屋から出られないではないか。そんなこんなで、3日ほど部屋に引きこもって過ごす羽目になった。確かに寝正月がモットーではあるけれど、そういう意味じゃない。本を読んでも頭に入らないし、淫夢でも観て時間をつぶそうにも、なんだかめまいがしてきてとても正視に堪えない(元からかも?)。仕方がないので、音楽を聴くことになる。これではまるで病人みたい。しかし大発見、発熱しているときに音楽を聴くと、なんだか以上にテンが上がる。やっほっほいって気分になる。1時間くらいしてダウン。だらしねぇな。
結局一週間近くを棒に振った。熱が下がり、保健所指定の療養機関を終えても、翌日は治ったんだか治ってないんだかわからない体を引きずって出かける羽目になった。やはりこういうのは、体がピンピンになるまで寝倒したほうがいいっすね。わかっていても、自分を取り巻く状況が厳しさを増しているので活動せずにはいられない。予定を詰めたときにコロナまで勘定に入れている人間はそういないだろう。つまり俺は何も悪くないのである。何も。
これで免疫はついたのだろうか。毒チンは2回目以降、なかなか時間が取れずに接種していないが、今回の感染と発熱が代替になればいいなぁと考えている。無理だろうけど。